今から42年前は何をしていましたか  Nikomat FT


Nikomat FT のファインダーは右にカギカッコ状の露出メーターがあるだけで現代のものとは情報量が格段に違います。さすがに1965年発売のものですからファインダー内に異物やクモリが少々見えますがそれでもデジタル一眼レフより明るく見える点は感心させられます。42年前なんて生まれてないよーという方多数でしょう。

『前略〜「Nikomat FT」を分解して、「Nikon F」などと比較してみればわかるが、さまざまな点で設計思想には対照的なものがある。使用するシャッターの違いから、巻き上げそしてチャージ系が全く異なるのは当然としても、ミラーの駆動系などもレバー類の大きさ、形など部品の一点一点に、加工し易さ、そして組立易さに対する配慮が現れている。〜中略〜設計するに当たって、「デザインは『Nikon F』に似せるように」という要請が上層部からあったと言う。実際にペンタ斜面の皮張りや、八角形のボディ形状など、「Nikon F 」のイメージが随所に現れている。ただ、違いはペンタ部の形が「Nikon F 」のアイレベルファインダーではいわゆる "トンガリ頭" であるのに対して、「Nikomat FT」では頂部に約 10 mm 角の平らな部分があるところである。
実はこの部分も「Nikon F」並みに "トンガリ頭" にするよう、設計のトップから指示があったそうだ。しかし、当時のデザイン担当者(入社して間もない若手のデザイナー)は「ここだけは譲れない」と主張し、とうとうそれを通してしまった。ここまで似せてしまっては、「Nikon F 」と別個の製品であるというアイデンティティが保てないというのである。「『何がなんでも「Nikon F」に似せろ !』という上からの指示に反発し、意地になった面もあったのだが、結果として「Nikon F」に似たデザインにせよという設計トップの判断は正しかった」と、当のデザイナーは述懐している。後にも述べるが、この「Nikomat FT」の成功は、日本光学のその後のカメラ事業に多大な影響を与えた。それには、このデザインの果たした役割も大きかったと言えるだろう。もし、この "10ミリ角" がなく、"トンガリ頭" にしていたらどうなったか ? そう考えると興味深い。〜後略。』(Nikon HP 『第5回 遡るニコン史 〜 Nikomat FT 』より)