茶色の朝


茶色の朝」抜粋:政府は言う「茶色が最も都市生活に適している。」→「茶色以外は違法である。ネコも犬もイタチも」→「現在茶色の犬を飼っていても考え方が変わったことにはならない。以前に黒い犬を飼っていた事実があれば違法である」→「自警団が結成され違法者は次々に連行されていった。主人公の友人も。」→以前に白黒の猫を飼っていた主人公は思う。「茶色党のやつらが最初のペット特別措置法を課してきやがったときから警戒すべきだったんだ。いやだと言うべきだったんだ。でもどうやって?政府の動きはすばやかったし、俺には仕事があるし、毎日やらなきゃならないこまごましたことも多い。他の人たちだって、ごたごたはごめんだから、おとなしくしているんじゃないか?」→「夜も明けきらないのに俺の家のドアを強くたたくヤツがいる」、、、、。


今回の参議院選では自民党改憲を争点にしていないので野党がいくら護憲を主張しても盛り上がりに欠けるのは当然です。
「安倍首相が消費税率引き上げ延期を正式表明したことで、首相の経済政策『アベノミクス』の是非が最大の焦点に」(読売新聞web)などと書かれていますが消費税率引き上げ延期は本来野党が言っていた事。すっかりお株を奪われた形の野党はだらしがないですね。
また、「公立高等学校授業 料無償制・高等学校等就学支援金制度」は民主党政権になったからこそ可能になったはず。18歳、19歳の有権者に対してこの施策がいかに意義のあるものだったか本気で訴えたのでしょうか。さらに彼らは「大学授業料の返済不要の給付型奨学金」制度案に大変関心があります。大学へいきたい人には国が責任をもっていかせてあげる、と訴え続けてこなかったのでこの点も自民党にお株を奪われてしまいました。自民党は前向きに検討する事案として閣議決定までしています。

いずれにしても与党と改憲派の党が両院で三分の二の議席を確保することができれば改憲の是非を問うための国民投票は近い将来間違いなく行われるでしょう。
野党の「憲法9条死守」というヒステリックな話は違和感を覚えます。9条は重要なことなので否定はしませんが改憲の際に最も問題が生じるのは憲法99条です。
憲法第99条(憲法尊重擁護義務)】
現行憲法天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
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自民党草案:すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない。

現行憲法では憲法を遵守すべき者を「天皇又は摂政」「国務大臣」「国会議員」「裁判官」「公務員」と規定しています。つまり「国民」はこの憲法を遵守する義務はありません。なぜなら、憲法は、一個人という弱い立場の者を権力者や統治者という強い立場の者から守るためのものだからです。強い立場にある者が一方的な行いをすることを抑制するために憲法が存在しています。国民が守るべきものは「法律」(条例や条約等も含む)だけです。
憲法では「教育(26条)」「勤労(27条)」「納税(30条)」について「義務」を課しているので国民も憲法を遵守しなければならないと思い込みがちですが、この3つは憲法の要請であり、憲法の要請に対して立法者(国会議員)はそれが確実に行われるような法整備をしなければなりません。憲法の要請によって立法・施行された法律を私たちは守らなければならない、というという意味においての「義務」です。
しかし、自民党草案では弱者も強者も一色択にして「すべての国民」に憲法の縛りをかけようとしています。これでは強い立場の者を抑制できません。そもそも自分達を縛っている憲法を自分達で変えてしまおうなどという本末転倒な発想自体が許されるものではありません。
そこで「国民投票」を実施して国民に判断させようとなります。「国民投票」は先に行われたイギリスのEU離脱・残留の是非を問う方式同様「はい」か「いいえ」のどちらか一方を選択することです。
「はい」が「いいえ」を一票でも上回れば新しい憲法にすることが可能になるわけです。
私の危惧しているのはここから先です。「国民投票」の前に各党から出される草案段階では国民が不利益と感じる文言は絶対に条文に盛り込まれません。しかし「はい」が過半数となった後に行われる新憲法の改正作業では草案の文言をいくらでも変えてしまうことができるのです。
国民投票の結果次第では権力者に「白紙委任状」を渡すことになるということを私たちは認識すべきでしょう。何れにしても過去の他の法案審議と同様に僅か100時間程度の審議で「十分に審議は尽くされた」として議論は打ち切りとなり自民党強行採決で新憲法が発布されることになります。

どのような選択がベストかはそれぞれの価値観によります。
茶色の朝」が私たちの国に起こらないことを願っています。